森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環
Green Material #3

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環

NICI GREEN
NICI GREEN
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NICI GREEN(ニキ グリーン)は、1986年にドイツで誕生したぬいぐるみブランド「NICI」が2021年にスタートさせたサステナビリティプログラム。地球の資源を大切に扱い、次の世代に豊かな環境を残すことを目指し、製品ラインのより環境にやさしい製造への転換を進めています。ペットボトルなどから再生されたリサイクル素材を使用したぬいぐるみや充填材を積極的に採用しており、2023年以降はほぼすべての製品にリサイクル素材を使用。サプライチェーン全体の環境負荷低減にも継続的に取り組んでいます。

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海や水辺には、その環境を静かに守り続けている”ヒーロー”たちがいます。

ビーバーはダムをつくって川の流れを整え、鮭は栄養を川から海へと運び、牡蠣は海水をろ過して水をきれいにする。それぞれの営みが、森・川・海をつなぐ水の循環を支えています。

この存在を、一人でも多くの人に知ってほしい。水や海の未来を、一緒に考えるきっかけになれば——そんな思いをより多くの人に届けるために力を借りたのが、世界中で愛されるぬいぐるみブランド「NICI(ニキ)」。環境に配慮した素材でキャラクターづくりに取り組むその姿勢が、ヘリーハンセンの想いと重なりました。

140年以上、自然とともにあるものづくりを続けてきたヘリーハンセンは、NICIとともにビーバー、鮭、牡蠣をモチーフにしたキーホルダーを制作しました。

この商品の売上の一部は、WWFジャパンが取り組む野生生物の生息域保全などに活用されます。

森と水辺をつくる、自然界の建築家〈ビーバー〉

ビーバーは、北アメリカやヨーロッパに生息する半水生動物。氷が張るような湖にも対応できる体を持ち、川や湖のほとりで暮らしています。カバやカピバラのように水辺で暮らす動物ですが、特別なのはその行動にあります。木を切り倒し、泥や砂利と組み合わせて川にダムを築く——そんな生態から、「森の建築家」「生態系エンジニア」とも呼ばれる存在です。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環
提供:ヒノトントンZOO(羽村市動物公園)

ビーバーが「ロッジ」と呼ばれる巣を水の中に作るのは、天敵から家族を守るため。陸上に巣を置くとオオカミやクマに狙われやすいため、入り口をあえて水面下に設けます。しかし水位が低いと外敵が侵入できてしまうので、ダムで川をせき止めて水位を上げる。一見大がかりに見えるダム作りも、わが家を守るための切実な知恵なのです。

丈夫な前歯で木を削り、前足で土をブルドーザーのようにかき集めてペタペタと積み上げていく。数キロメートルにわたる巨大なダムを作ることもあり、毎夜せっせと作業を続けます。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環
提供:ヒノトントンZOO(羽村市動物公園)

ダムが川をせき止めると、まわりに湿地が生まれます。流れがゆるやかになった水辺には水草や植物が育ち、それを食べにヘラジカなどの大型動物がやってくる。両生類や水鳥も子育ての場として集まり、急流では暮らせなかった魚たちも棲みつき始める。魚が増えれば、今度はそれを狙う捕食動物も訪れる——一匹のビーバーが作ったダムが、連鎖するように生態系を豊かにしていくのです。

「周りの環境を変えることができるのは、ビーバー以外だと人間しかいないと言われています」——羽村市動物公園 飼育員 松浦さん

さらに驚くべきは、ビーバーがいなくなった後も恩恵が続くということ。動植物が集まった土地には栄養が蓄積され、やがてまた木々が育ち、再びビーバーが戻ってきます。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環
提供:ヒノトントンZOO(羽村市動物公園)

そんなビーバーですが、実はかなりのマイペース。急にピタッと止まってまばたきだけをして、またゆっくり動き出す。我が道を行く、おおらかな性格です。けれど、ひとたび作業となれば話は別。黙々と働き続ける、頼もしい建築家でもあります。

マイペースに、でも確実に。ビーバーのダム作りは、自然界の長い循環の始まりでもあるのです。

こうして生まれた豊かな水辺は、やがて川の流れとなり、海へとつながっていきます。

海から森へ栄養を運び、命をつなぐ旅人〈鮭〉

鮭は、生まれた川を離れて海へと旅立ち、数年かけて大きく成長したのち、秋になると産卵のために再び同じ川へ戻ってきます。この習性は「母川回帰」と呼ばれています。自分が生まれた川を一生忘れないその旅は、地球規模の壮大な命のリレーともいえるでしょう。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環

海で育った鮭は、川を遡上しながらヒグマやオジロワシ、シマフクロウなど、生態系の頂点に立つ生き物たちの貴重な食料になります。もし数が減れば、それらの動物も食べるものに困り、生態系全体のバランスが崩れてしまう。鮭は、それほど重要な存在です。

川を遡上すると、雌が「産卵床」と呼ばれるくぼみを掘り、そこに雄が寄り添って産卵を行います。そして海の栄養を運び上げ、懸命に命をつないだ末、産卵後の雌雄は7〜10日ほどで静かに死を迎えます。その体は小動物から微生物まで、さまざまな生き物の養分に。排泄物として土にしみこみ、川沿いの木々を育て、やがて雨とともに再び海へと流れていきます。

海の栄養を川へ、川の栄養を森へ、森の栄養をまた海へ。
鮭は生きている間も、死んだ後も、自然の循環を支え続ける存在なのです。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環

しかし現在、気候変動の影響で川や海の環境が変わり始めています。水温の上昇や、川に設けられた構造物によって遡上が阻まれるなど、産卵場所にたどり着けないケースが増えています。

こうした課題に対応するため、各地で「魚道整備」が進められています。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環

魚道とは、遡上しやすいように川の流れを整えた通り道のこと。川幅を広げたり、蛇行させたり、木を斜めに配置して流れをゆるやかにしたりと、失われた自然の川の姿を取り戻していく作業です。その恩恵は鮭だけでなく、あらゆる生き物が暮らしやすい川の再生にもつながっています。

「鮭に生かされ、産業を支えられている地域の人々にとって、鮭を守る以外の選択肢はありません」 ――斜里町役場 水産林務課 森高志さん

人間の手によって変えられてしまった川を、再び人間の手で自然の姿に戻す。
その取り組みには、ボランティア団体や若手の漁師など、さまざまな立場の人々が関わっています。

海の底から、生態系を支える縁の下の力持ち〈牡蠣〉

岩や石に自ら分泌するタンパク質でくっつき、そこから一生を過ごす牡蠣。動き回ることも、逃げることもしない、一見すると地味な存在です。でも、じっとしている間も、絶えず海水を取り込み続けています。

その量、1日あたり約200リットル。
お風呂1杯分ほどの海水を、1匹でろ過してしまうのです。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環

「ろ過摂食」と呼ばれる牡蠣の食べ方は、海水を取り込みながらプランクトンや有機物をエラでこし取り、不要なものは粘膜で固めて外へ排出するというもの。こうして海水中の濁りや余分な栄養分が取り除かれ、赤潮の原因となる植物プランクトンの増えすぎも抑えられます。

排出された不要物も、ほかの生き物にとっては大切な餌になります。牡蠣のろ過は、まわりの生き物を呼び込むきっかけにもなっているのです。

ちなみに、牡蠣を食べて体調を崩すことがあるのも、この能力ゆえ。海水中のウイルスまで取り込み、体内に蓄積してしまうため、生育環境の管理がとても重要です。海をきれいにし続けた、その側面とも言えます。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環

同じ種類の仲間がいる場所に集まる性質を持つ牡蠣は、密集してくっつき合い、やがて「牡蠣礁」と呼ばれる塊を形成します。サンゴ礁のように、さまざまな生き物を支える“海の拠点”です。

そこには幼魚やエビ、カニが集まり、隠れ家や餌場として活用されます。波の力をやわらげ、干潮時には潮だまりをつくり、泳ぎが得意でない稚魚たちの逃げ場にもなる。1匹の小さなろ過が仲間を呼び、やがて牡蠣礁となる。そこが海全体の生態系を支える基盤になっていきます。

「牡蠣はキーストーン種とも言われていて、生態系の中でとても重要な存在です。牡蠣がいることで周りに多様な生き物が集まり、生態系が形づくられていきます」 ——株式会社イノカ 金田さん

牡蠣が減れば、植物プランクトンを抑える存在がいなくなり、赤潮が広がりやすくなります。さらに状況が悪化すると、海中の酸素が不足し、青潮の発生につながることもあります。その結果、多くの生き物が生きられなくなってしまうのです。

森から川、そして海へ。
目には見えないその循環は、こうした存在によって静かに支えられています。

Message

ビーバーが森と川をつくり、鮭が栄養を運び、牡蠣が海をきれいにする。それぞれが自分のために生きながら、気づけば生態系全体を支えている——そんな生き物たちの姿に、水や海の豊かさを守ることの大切さを改めて教えられます。

NICIとともに生まれたこのキーホルダーには、そんな想いを込めました。
この商品の売上の一部は、WWFジャパンが取り組む野生生物の生息域保全などに活用されます。
手にとってくれた誰かが、水や海に思いを巡らせる小さなきっかけになりますように。

ヘリーハンセンは、「BE WITH WATER(水と共に生きる)」のもと、すべての生き物が水のある暮らしをよろこび続けられる未来のために、これからも取り組みを続けていきます。

森から海へ。ビーバー、鮭、牡蠣がつなぐ水の循環


WWFは100カ国以上で活動している環境保全団体で、1961年に設立されました。人と自然が調和して生きられる未来をめざして、失われつつある生物多様性の豊かさの回復や、地球温暖化防止などの活動を行なっています。

〈取材協力〉
斜里町役場 水産林務課 森高志さま
ヒノトントンZOO(羽村市動物公園) 上林さま、松浦さま
株式会社イノカ 生態圏エンジニア 金田さま

Products

HH×NICI ビーバーキーリング
Price
¥1980 (税込)
Color
BR

HH×NICI ビーバーキーリング

HELLY HANSENと、NICIによるコラボレーション商品。
再生プラスチック素材を用いたシリーズ NICI GREENが使用されています。

環境問題に興味を持つきっかけにしていただけるように、
海や水の環境にまつわる生態をもつ生き物をモチーフに選びました。

ビーバーは、ダムを形成して湿地を生み出し、魚や両生類、植物の生息域を広げることで知られる水辺の生態系のキーストーン種です。

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HH×NICI オイスターキーリング
Price
¥1980 (税込)
Color
IV

HH×NICI オイスターキーリング

HELLY HANSENと、NICIによるコラボレーション商品。
再生プラスチック素材を用いたシリーズ NICI GREENが使用されています。

環境問題に興味を持つきっかけにしていただけるように、
海や水の環境にまつわる生態をもつ生き物をモチーフに選びました。

カキは、海水を濾過してプランクトンや有機物を除去し、水の透明度や栄養バランスを整える、海の健康を守る役割を持つ存在です。

商品ページへ
HH×NICI サーモンキーリング
Price
¥1980 (税込)
Color
G

HH×NICI サーモンキーリング

HELLY HANSENと、NICIによるコラボレーション商品。
再生プラスチック素材を用いたシリーズ NICI GREENが使用されています。

環境問題に興味を持つきっかけにしていただけるように、
海や水の環境にまつわる生態をもつ生き物をモチーフに選びました。

サケは、母川回帰して産卵し、産卵後の遺骸が川や森に栄養を還元して多様な生物を育むことで、広域な栄養循環と生態系のバランスを支える重要な存在です。

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Words

母川回帰

鮭や鱒が、生まれた川(母川)に産卵のために戻ってくる習性のこと。稚魚の頃に川の匂いを記憶し、数年にわたる海での生活を経た後も、その記憶を頼りに正確に生まれた川へと帰ってくるとされています。海に出たサケが母川に帰り着ける確率は1%以下とも言われており、その壮絶な旅は「命がけの帰還」とも表現されます。

牡蠣礁

牡蠣が同じ種類の仲間がいる場所に集まる性質によって、岩や殻の上に世代を重ねながら密集してできた塊のこと。サンゴ礁と同様に、多様な海洋生物の生息地・隠れ家・餌場となります。牡蠣礁がある水域では、ない水域に比べて魚類の量が3〜5倍多いという研究報告もあり、沿岸の生態系を支える重要な拠点となっています。世界では乱獲や汚染により、自然の牡蠣礁の約85%が失われたとも言われています。

キーストーン種

生態系の中で、個体数は少なくても、その種がいなくなると生態系全体が大きく変化してしまうほど重要な生物種のこと。西洋建築のアーチを支える要石(キーストーン)になぞらえて名付けられた概念で、生態学者のロバート・ペインによって提唱されました。ラッコやオオカミが代表的な例として知られ、ビーバーや牡蠣もその一種とされています。

Text by Yukari Fujii @yukaringram